秩父蒸留所は肥土伊知郎氏により埼玉県秩父市に建てられ、2008年頃から操業開始しています。
肥土伊知郎氏の実家が経営していた東亜酒造が経営難に陥ったことをきっかけに、大量に余っていた羽生蒸留所の原酒を守るために、株式会社ベンチャーウイスキーを立ち上げました。
笹の川酒造の力を借り、廃棄予定となっていた羽生蒸留所の原酒を守り抜いて、ご自身の名前をつけてブランド化して生まれたのがイチローズモルトです。
イチローズモルトは世界的に大変注目されており、全54種類あるカードシリーズのフルセットがオークションで1億円相当の値段がついたことで一時話題となっていました。
秩父の夏は37度、冬は-10度まで冷え込むことがあり、非常に寒暖差の激しい土地です。
この激しい寒暖差が熟成により良い影響を与え、少ない熟成年数ながらも高い評価を得ている理由の一つとなっています。
秩父蒸留所のもう一つ大きな特徴は、発酵槽です。
普通であれば発酵槽はステンレス製か、木材だとしても杉や松が使われることが多いですが、秩父蒸留所ではミズナラを使用したオーダーメイドの発酵槽を使用しています。
ミズナラには乳酸菌が棲みついており、フルーティーで華やかな味わいを生み出してくれます。
世界的に認知度と人気が年々増しているイチローズモルトは、蒸留所の規模の小ささも相まって、発売すると共に即完売する状態が続いていました。
それを受け、供給の安定化を計って2019年に第2蒸留所を建設いたしました。今後供給量が増えることで、もう少し手にしやすくなることを望まれているモルトファンも多いはずです。
イチローズモルト ダブルディスティラリーズ(Ichiro’s Malt Double Distilleries)
DDと略して呼ばれることもあるダブルディスティラリーズは、2000年に閉鎖した羽生蒸留所のシェリー樽熟成原酒と、2008年に開設された秩父蒸留所のミズナラ樽原酒をバッティングしたものとなっています。
こちらは2009年のWWA(ワールドウイスキーアワード)で、「ベストジャパニーズブレンデッドモルト」を受賞しており、世界的に注目されています。
羽生蒸留所と秩父蒸留所を繋いだこの一本は、イチローズモルトの成り立ちを象徴する存在です。
イチローズモルト ミズナラウッドリザーブ(Ichiro’s Malt Mizunara Wood Reserve)
羽生蒸留所の原酒をキーモルトに、スコットランドの原酒をバッティングしてさらにミズナラ樽で追熟を重ねたブレンデッドモルトウイスキーです。
使用された原酒の蒸留所は公表されていませんが、コンセプトとしてピートの強いタイプの原酒を使っているということは公開されています。
秩父蒸留所では、ミズナラの熟成樽にも強いこだわりを持ち、北海道産の上質なミズナラの木を仕入れて自社で樽に加工しています。
スイートな味わいの奥にピートを感じられる一杯です。
こちらも2010年のWWAで「ベストジャパニーズブレンデッドモルト」を受賞しています。
イチローズモルト ワインウッドリザーブ(Ichiro’s Malt Wine Wood Reserve)
羽生蒸留所の原酒とスコットランド原酒のブレンデッドモルトをフレンチオーク製の赤ワイン樽で追熟したものです。
赤ワイン樽で熟成すると華やかでフルーティーな味わいになるとされています。 使用した赤ワイン樽はマスカットベーリーAとメルローの2種類とのこと、ビターチョコのような甘さに果実感を秘めた非常に人気のある一本です。
そして何とこちらも2011年のWWAで「ベストジャパニーズブレンデッドモルト」を受賞しています。